「心理的安全性」と「ハラスメント」の関係性
ミライデザイン合同会社は、静岡県を中心に「心理的安全性」をテーマにした研修や講演を提供しています。
さて今日は、
- 職場のあらゆるハラスメント問題の対応に困っている
- 社員に元気がない
- 社員が突然「仕事をやめる」と言い出し戸惑っている
こんなお悩みを持っている人事担当の方や経営者様向けに「心理的安全性」と「ハラスメント」の関係性についてお話をしていきますね。
心理的安全性とは
「心理的安全性(psychological safety)」とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。
◯自分が思ったことを安心して発言できる=心理的安全性が高い
✕自分が思ったことを恐れから発言できない=心理的安全性が低い
心理的安全性が低い職場の例は以下の通りです。チェックが多いほど心理的安全性が低いと言えます。
- ミスをするとたいてい叱られる
- 自分が情けない、周囲に迷惑をかけていると落ち込む
- 失敗を正直に報告できない
- 失敗を恐れてリスクがある意見や行動を控える
- 上司や周囲からの評価を過度に気にする
- 平等な発言機会が無い(意見自体も求められない)
- 指導者やチームと異なる意見は受け入れられない
- どうせわかってもらえない、言っても無駄という諦めがある
- メンバー同士で建設的な話し合いができない(批判やネガティブな意見は言えない)
- チームのメンバーに助けを求めづらい
- 仕事とは関係ない個人的なことは話しづらい
厚生労働省〜心理的安全性に基づく パワーハラスメント防止対策〜より
心理的安全性とハラスメントの関係性
心理的安全性が低いと、こんなことが起こる可能性があります。
- 職員の離職率向上による人手不足
- 生産性の低下による売上ダウン
また「失敗を正直に報告できない」ことが常態化していると、
- 不祥事
- 労働災害
など会社の存続に関わる最悪な事態を招きかねません。
心理的安全性とハラスメントは相関関係にあり、
パワハラ上司が怖いから、自信を無くして思ったことを言えない
部下にやる気が感じられないから、ついつい叱咤してしまう
という相容れない状態がよく起きています。
さらには、上司のさらに上の立場の人に恐怖心を抱き、パワハラやモラハラにつながってしまい、部下が被害を受けてしまうパターンも散見されます。
ビッグモーター社のパワハラ横行と心理的安全性
心理的安全性が低いゆえに起きた会社の不祥事の代表例が、保険の不正請求問題で揺れる中古車販売業者のビッグモーター社です。
保険の不正請求問題が取り沙汰されてから、ビッグモーター社の様々なパワハラ行為が明るみに出ました。
- 損失額を社員に強要
- グループLINEで幹部が罵詈雑言
- 板金・塗装部門で1台当たり14万円前後のノルマが課せられており、達成できない場合は給与から差し引かれる
- 店舗の出入り口から10m以内に雑草があるだけで減給や降格の処分が課された
偶然にも、弊社のある富士市では、店舗前の街路樹が市に無断で除去されたことが全国ニュースとなりました。
ビッグモーター社「社長を頂点」としたトップダウン型の組織で、常に上司が正しく、部下に命令し、部下はそれに盲従するという体質が根付いていたと思われます。
部下は有無を言わず従っていた訳ですから「心理的安全性」は極端に低かったことが予測できます。
社内に溜まっていた不安が内部告発という形で噴出し、会社の存続を揺るがしかねない事態にまで発展してしまったのです。
「うちの会社は大丈夫」と対岸の火事と捉えている会社ほど注意が必要かもしれません。
心理的安全性を高める具体的な方法
では実際に心理的安全性が高い職場を作るにはどうしたらいいでしょうか?
誰がハラスメントを行っているのか?特定して対応する方法も効果的かもしれません。
が、戦犯をひとりに決めることはおすすめしません。
なぜなら、職場の雰囲気は誰かひとりではなく「全員」で作っているものだからです。
根本的な改善方法としてオススメなのは、「社員のやる気を引き出す職場・仕組みづくり」に取り組むことです。
誰かを責めても仕組みが変わらなければ、新たな問題が発生するだけです。
だとするならば、会社全体のルールや仕組みを変えてしまった方が早く効果も出ます。
実際にどう心理的安全性が高めていくか、ですが、残念ながら【明日からすぐに心理的安全性が高くなる】という魔法のような方法はありません。
社員のやる気を引き出す言葉がけやルールを毎日コツコツ実践していくしか無いのです。
またコツコツ実践していくためには、会社の問題を自分を問題の一部だと認識することです。
私達はつい、自分の所属する「組織・チーム」のことなのに、自分を問題の外側に置いてしまいがちです。
認識して問題への効果的なアプローチが取れるようになります。
どうしても変化のスピードを早めたい、というならば、1つだけ方法があります。
それは上司が進んで取り組みに参加することです。
なぜなら、「特に上位の役職者は本人の人格に関係なく、ただ役職が高いということつまりヒエラルキーそのものが心理的安全性を損なう」からです。
上司はそれをまず知ることが第一歩です。
知らないがゆえに、本人にその「つもり」はなくても、心理的安全性が低くなっている職場は珍しくありません。